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EV以外でどこに広がる?|医療・航空宇宙・ロボット・ドローン市場における全固体電池の可能性

※当画像は電池イメージです。

 

1.全固体電池とは

【基本構造とリチウムイオン電池との違い/利点(安全性・高エネルギー密度・小型化)】
全固体電池は、従来のリチウムイオン電池の「液体電解質」「固体電解質」に置き換えた次世代電池です。
液体がなくなることで発火リスクが下がり、安全性が高まります。
さらに固体ならではの構造により、より多くの電気をため込め、小型化や形状自由度も広がります。
一言でいえば「燃えにくく、長持ちし、自由にデザインできる電池」
次世代バッテリーとしてEV(電気自動車)への搭載を目指す自動車メーカーを中心に開発が進んでおり、この特性によりモバイルや医療機器、ドローンなどEV以外の分野でも可能性が広がっています。ここではEV以外での全固体電池活用について取り上げます。

 

2.なぜEV以外でも注目されるのか

全固体電池が注目を集めているのは、単なる新技術だからではありません。
社会的背景/技術的要請/政策的後押しという三つの流れが重なっているためです。

2-1.脱炭素とエネルギー転換の潮流

世界的に進む「カーボンニュートラル」「エネルギー転換」の流れの中で、蓄電技術は社会インフラを支える存在になっています。

再生可能エネルギーの普及 → 発電が不安定 → 大容量かつ安全な蓄電池が必須

太陽光や風力は天候・時間帯で出力が変動し、安定供給が難しいという課題があります。
そのため「余剰電力をため、不足時に取り出す」蓄電池が欠かせません。
大規模かつ安全にエネルギーを貯蔵できる次世代電池として、全固体電池が有力候補です。

EVシフト → 車載電池の性能・安全性向上が急務

従来型リチウムイオン電池の限界が見え始め、「次の電池」として全固体電池に期待が集まっています。

2-2.技術的ブレークスルーの可能性

安全性向上:液漏れや発火リスクが小さい
高エネルギー密度:同じサイズでも長持ち
小型化・自由な形状:液体を使わないため、薄型・小型に適し、ウェアラブルや医療機器にも適用しやすい
長寿命:電解質劣化が起きにくく、デンドライト成長も抑制されるため、従来比で5〜10倍の寿命が期待される
軽量化の可能性:リチウム金属負極の利用で、同容量でも軽量化(ドローン・航空用途で有効)
耐環境性:高温・低温・真空など過酷な環境でも安定動作
環境面のメリット:交換回数の減少により、廃棄電池量の削減に寄与

2-3.政府・政策の後押し

日本政府は経済産業省の主導で次世代電池を重点政策に位置づけ、グリーンイノベーション基金などを通じて数千億円規模の投資を実施。NEDOが研究開発プロジェクトを推進しています。
トヨタ、パナソニック、村田製作所、出光興産など大手メーカーが参画し、欧米・中国でも国策として研究開発が加速しています。
国家的プロジェクトとして推進されることで、研究スピードが一段と高まっています。

 

3.主要プレイヤーと開発状況(EVその他への取り組み)

企業名役割・特徴備考
出光興産硫化物系固体電解質のリーディングカンパニー。小型〜大型パイロットラインでの量産体制を構築。トヨタ(電池材料・量産協業)、他材料メーカーと共同開発
三井金属硫化物系固体電解質材料の技術力で国内外需要に対応。量産設備導入。自動車電池メーカーと幅広く協業
マクセル酸化物系全固体電池分野で世界的な量産体制。IoT・産業・医療機器用途で実用化済み。スバル、工場の産業用ロボットに採用
村田製作所小型・高エネルギー密度の酸化物系全固体電池を自社技術で量産・商品展開。
日本電気硝子ガラス系固体電解質(リチウムガラス)で全固体電池の高安全性化。
レゾナック(旧昭和電工)高分子系固体電解質・先端材料で技術革新。大容量・高出力化技術を保有。
カナデビア(旧日立造船)独自技術による全固体リチウムイオン電池の開発。BtoBや産業向け用途拡大。
TDKSMD対応「CeraCharge」など、小型デバイス用全固体電池を世界展開。
オハラガラス系固体電解質・新素材開発で全固体電池材料の拡大。

 
 

4.想定される活用分野とメリット

 モバイル・ウェアラブル

想定例:スマートフォン、スマートウォッチ、ワイヤレスイヤホン、ヘルスケアバンド
メリット:充電頻度の低減/デザイン自由度(薄型・新形状)/安全性向上(発熱・発火リスク低減)

 ロボット

想定例:協働ロボット、物流倉庫のAGV、サービスロボット
メリット:稼働時間延長/省人化の加速(交換・充電作業の削減)/安全性向上

 医療機器

想定例:ペースメーカー、人工心臓、体内センサー、ポータブル医療機器
メリット:小型・高安全性(液漏れなし)/長寿命(交換サイクルの長期化)/高信頼性(過酷環境に耐性)

 航空宇宙

想定例:人工衛星、宇宙探査機、航空機の電源
メリット:極限環境対応/軽量化(打ち上げコスト低減)/長寿命(メンテナンス不能環境での信頼性)

 ドローン

想定例:物流、災害調査、インフラ点検
メリット:飛行時間延長/耐環境性(高温・低温に強い)/安全性(火災リスク低)


  

5.実用化に向けた課題

 量産コスト

JSTの調査では、現行リチウムイオン電池の4〜25倍に達するとの試算もあります。材料の種類やセルサイズ、歩留まり条件によって変動しますが、当面は従来電池に比べ高コストであることは確かです。

  材料・製造プロセス

ラボ段階では良好なセルが得られても、量産移行時のプロセス設計・歩留まり管理に壁があります。固体電解質は数十μmの微細構造で、製造ばらつきや微細欠陥が性能に直結します。ラボで高い良品率を達成できても、量産での歩留まり確保にはなお課題が残ります。
 → 「歩留まりを担保しつつ高品質セルを大量生産」できるようになるまで、商用普及は限定的との見方が現実的です。

 固体電解質の技術課題

• 硫化物:湿気に弱い
• 酸化物:焼結コストが高い
• ポリマー:イオン伝導性が低い
• 加えて界面抵抗長期安定性の問題も残り、研究開発の最重要テーマとなっている。
 

6.市場展望(2025〜2035年)

今後10年でモビリティ以外の分野にも普及が進むと予測されます。
2025〜2030年前半は比較的小型で高付加価値な用途が先行(例:植え込み型医療機器、産業用センサー/IoT、ドローン)。これらは容量より安全性・メンテナンス性を重視するため、現状の高コストでも導入しやすい分野です。
2030年以降量産技術の進展でコスト低下が進み、モバイルデバイスや産業用ロボットなど中型市場に拡大が期待されます。
ロボティクスでは長時間稼働・保守削減ニーズが強く、全固体電池が差別化要因になり得ます。
航空宇宙・防衛では極限環境での信頼性を理由に、早期からニッチ用途で採用が進む見込みです。
予測では、全固体電池市場は2035年1兆円規模に達するとの見方もあります。
製造業・電子部品メーカーにとって、モビリティ以外の先手が成長戦略の鍵となります。
 

7.総論:EV以外のポテンシャル

全固体電池はEVの次世代バッテリーとして注目されますが、実際には医療機器/産業用ロボット/モバイル・ウェアラブル/ドローン/航空宇宙など、高信頼性・長寿命・安全性が求められる領域で、既に実用化・実証が始まっています。
これらの分野はEVのように「大容量・低コスト」を前提としないため、現状の高コストでも採算が取りやすい点が特徴です。
特に製造業や電子部品メーカーは小型・高付加価値市場を狙うことで新たな収益源を確保できる可能性があります。
 

8.全固体電池はどのように成長していくか?

いまはどのような状況か?

こうした市場・技術動向は、ニュースや公開レポートだけでは断片的になりがちです。
例えば医療用ヒアラブル市場は、調査会社により定義や分類が異なり、規模・シェア推定にブレが生じます。現場での導入状況や課題は非公開のことも多く、ネット調査だけでは把握しづらいのが実情です。

CAMI&Co.では、デスクトップ調査に加えて医療機関・メーカー関係者へのインタビューを実施し、統計と現場の生の声を組み合わせた分析を提供します。
市場規模や成長率にとどまらず、競合動向、参入タイミング、ユーザーの本音まで含めた立体的な市場像を把握できます。
 

9.CAMI&Co.の調査サービス

• 市場調査:市場環境分析、マーケットサイズ/成長性
• 技術調査:テーマに沿った技術・製品の研究開発・市場投入状況
• インタビュー調査:企業・学術機関等の有識者へのメール/電話/Web会議/面談による調査
• 論文調査:研究論文で重視される論点、研究・実験対象、有識者の把握、および一般的な論説の確認
必要な調査ボリュームに応じたスケジュール・費用感で承ります。

出典

※1 グリーンイノベーション基金事業/次世代蓄電池・次世代モーターの開発(NEDO)
※2 低炭素社会実現に向けた政策立案のための提案書 蓄電池システム(Vol.8)
※3 全固体電池:2035年までに90億ドルの市場規模の可能性(IDTechEx)

 

 

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